ページを横断していく文章と「四次元立方体」(十年ひと昔)

アクロバット前夜

アクロバット前夜

「アクロバット前夜90°」として通常のタテ書きで再刊(2009)されているとは、知らなかった。2001年初版なので、8年を経てやっと「普通の本」になれたんですね。
このオリジナル版はヨコ書きの文章がページをまたいでどんどん暴走してゆくというスタイル(装丁家菊地信義の仕業)で文字が組まれてあり、つまり最初から最後のページまでの1行目を追っていって、2行目はまた最初のページに戻って…というせわしない読書を強制する本でした。普通の本に比べると×行数分(20行として20倍)ページが開かれることになるわけです。
書店で偶然手にし、そういう文字組になっているということに気がつくまでに結構時間がかかったこと、やっと気づいて「なーるーほーどー! …菊地信義の仕業か、面白いけどやりすぎじゃないのかぁ」と、この本の作者のことを気にかけつつ、「世界一風通しの良い本」というキャッチフレーズが思い浮かんだことを思い出しました。あれが10年前か。結局買わなかったし、読んでないんですけどね。
ただ、いまさらながら、菊地信義の装丁が的を射ていたのかどうか確認してみたくもあります。さて、どちらで読むべきか。


四次元立方体 (ブックプラス)

四次元立方体 (ブックプラス)

これは10年前つながりで。

タイトルの「四次元立方体」というのはきっと「この本」自体のことなんだろうと見当をつけつつ、『ビーチ』の作者なので読まなかった、という思い出があります。
そうです。「天の邪鬼」です。
でもアマゾンのレヴューを読むとそれで正解だったかと思われ。
もちろん「メタ書物=本についての本」ではなかったです。話の構成の比喩が「四次元立方体」

はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)

はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)

これは「世界一風通しの良い本」で思い出したことですが、図書館の本というのは貸し出された回数分、それもいろいろな人間に開かれるわけで、本によってはものすごく風通しのいいものになっているはずです。
このあいだ図書館の児童書コーナーでこの本をなんとなく本棚から抜き出したのは、その装丁、特にクロス(装丁用の布)の質感がとても好きだからでした(上の写真は函です)。自分でも持っているのに、書店や図書館でなんとなく手にとってしまう本というのは、その装丁を含めて気に入っている本に限られるのではないでしょうか。
保護用のビニールシートを貼られているためにその魅力は半減していましたが、手に取って気づいたのは製本がものすごくしっかりしているということでした。そうとうな回数開かれているために背の丸みは完全になくなっていましたが、開いてみて危うい(もうすぐ壊れそうな)感じがまったくしないのです。
製本は奥付を見るまでもなく「松岳社(株)青木製本所」。
ダイアリー=エンジェル』でたいへんお世話になった青木(社長)さんの製本所です。ありがたくも、誇らしくも感じました。恩返しできたら、と切に感じておるしだいです。