Ardoise magique アルドワーズ・マジック「魔法の石板」
- 作者: 堀江敏幸
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2003/11
- メディア: 単行本
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とつぜん声を失い,手話も知らない者たちのやりとりは、筆談に頼るしかない。手術直後のペロスが用いていたのは,文具というより玩具に近い一種のマジック・ボードだった。かつてフランスの小学校では,ノートのかわりに小さな石板が使われていたのだが、白木で四方を囲まれた升目つきの黒いスレートの板はいまでも文具店で売られており、小売店やカフェなどで価格や品目を記すために用いられることも多い。ペロスが手にしていたのはその発展形で、小型の固い板にぴたりと張られた蝋紙のシートの上から付属ペンで文字を書き、まちがえたりいっぱいになったりしたらそのシートをゆつくりはがす。すると文字が消えて紙はもとにもどり,何度でも書きなおせるという仕掛けである。仏語でArdoise magiqueと呼ばれているこの文具をあえて直訳すれば「魔法の石板」。書いては消し、消しては書く。しかも紙とちがって、ここに記された文字や描かれた絵は残らない。その場その場で立ち消え、目に見える沈黙が生起する。
(略)アルドワーズ・マジックという美しい言葉は、これこそ不幸中の幸いとするべきか病床日記のタイトルに採用され、声を奪われたペロスの一時期を支える重要な武器になった。
これはこれでアーティストの作品のようです by http://www.buypichler.com/pizzas.html:TITLE=michalis pichler
Freud's magic board.
Sigmund Freud thought the magic board was a perfect model for the human memory. Whatever is written on the surface (Freud: that of which one is consciously aware) leaves behind traces on the wax background, even when the board is cleared. Freud wrote a short essay on this in 1925. We thought this both scientifically and culturally important and that it deserved better than to be used as a toy in a plastic frame, so we have given it a stainless steel frame for use as a memo board.